仙北市周辺の里山歩きの紀行文を連載します。是非ご覧ください。
「ふらり山旅」 春紀行
いつか雪の着いた行太尾根を歩いてみたかった。大相沢林道を車で走りどこまで入れるか。林道にはまだ雪が残っている。日本一のブナの入り口、通称小行太の尾根鞍部に車を止め歩き出す。春の芽吹きはこの辺りではようやく始まったばかりだ。二十年も前、大広久内沢から約二時間をかけ歩いて山菜採りに来たことを思い出す。
春のやわらかい日差しを一杯に浴び、谷から吹く風が爽やかに頬を撫でる。様々な草木の芽が雪に押し付けられてきた反動を一気に吹き返す。その色芽がとても新鮮で美しい。正面に雪を抱いた秋田駒ケ岳、ここから眺める姿は重厚だ。カツラの真っ赤な芽吹き、タラの芽のあずき色の芽吹き、イタドリの異様な赤、それぞれに競い合って誇示するかの如く始まった自然の春。大型連休の一日を我一人行太沢からブナの尾根に向かう。続く