そんな誰もいないゲレンデ、植物たちも何事だろうと思ってはぢけてみせる。右に左に向きを変えながら急斜面を滑り降りる。バージンスノーにシュプールを描いて。 ヤマハンノキ、ウリハダカエデの枝に着いた雪のボンボラッコ、そんな雪の谷を延々と歩き薄暗くなった行太尾根を後にした。 風の回廊、風の樋、風の紋様、風のすり鉢、風の縞、キレット、そんな風が造りだす自然の造形美を見ながら谷を歩く。風と雲の流れの間から時折顔を出す冬の木漏れ日、急峻な雪の壁面を真正面に見ながらどこまでも続く雪海原、スキー板の二本のレールを残し歩く。誰とも何時間も話をしない。自然の樹、風、雪、岩、雲、太陽、動物たち、そんな生物と精一杯お話をしながら「雪の谷」を歩く。またいつしか「ふらり山旅」に出るのである。終わり 長く暑いなつゅでした。